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大貴はそう言って立ち上がると、上着を羽織った。
「晩ご飯はおでんを作り置きしとく。あと、何か買って来るものあった?」と、いつもと変わらない調子で、買い物へ行く準備を始めるので、私の思考も現実へと引き戻される。
「あ、えっと…お餅とか?」
「お餅?肉まんじゃなくて?」
お正月と言えばと考えて思いついたものを言っては見たけれど、冬になると、私がよく肉まんを買っていた事を私ではなく大貴が覚えていた。
買わなくなったのは、食事が娘中心のメニューになってからだ。それに、時間もお金も余裕がなくて、買うものも大分変わってしまった。
「やっぱり子どものおやつ用に、お菓子をお願い」
「じゃあ、ゆずちゃんの好きなお菓子をメールしといてよ」
まるで普段からそうであるような返事をして、買い物に出かける大貴。
そして、その後、あの話題には一切触れる事なくおでんを仕込み、娘に請われて晩御飯を一緒に食べて帰って行った。
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