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何もかも、ダサ過ぎる女が面白くって、あたしはすぐに動画に撮った。そして、女に見えないようにカメラを切り替えて、見ている子たちに何が起こったのかを教えた。
コメントもリアクションも大受け。大好評だった。
「ゲロまずレビューしちゃったから、ドン引きすると思ったけど、最後のあれのおかげで、みんなウケてくれたね〜」
「ね〜。……あ! こういうの、なんかことわざであったよね?」
あたしの質問に、ほののんはにっこり笑って答えてくれた。
「不幸中の幸い、だよ」
「さっすがほののん!」
その笑顔を見て、あたしはホッとした。よかった。ほののんはもう立ち直っている。
***
次の日の朝。
「なにこれ!?」
学校へ行く途中、Y字路であたしは大声を出した。驚きと、怒りで。
原因は、掲示板に貼り出された1枚のポスター。
『盗撮は、犯罪です。やめましょう』
新聞を切り抜いて貼った文字は、あたし達3人が写っている写真の上に貼られていた。昨日の横断歩道、それから、3人で英会話教室に向かう途中のところ。
スマホを構えたあたしの手元に、わざわざ赤丸なんかつけて!
こっちが盗撮されてるよ!!
ムカついた気持ちのままに、あたしはポスターをベリッとはがした。こんなの、破れたって構わない!
「あ。勝手に町内会のお知らせ破いてる〜」
「いけないんだ〜悪い子だ〜」
キャハハッと笑うほうを見れば、黄色い帽子をかぶった下級生がいた。1年生か2年生か知らないけど、生意気なその子らを睨みつける。舌打ちもしてやれば、その子達はささっと目を伏せて、走り去った。
このポスターは1枚だけじゃなかった。
あたし達3人の通学路だけじゃなく、学校へ向かうところにある、全部の掲示板に。
先生達には、「あたし達を盗撮した誰かがいる」と訴えた。だって、本当のことだし。
でも、先生は困った顔になった。
「スマホいじってるところを撮っただけだと、犯罪にならないんだよ。……一応、相談はしてみるけど」
あたし達の姿は、パンツだって胸だって見えてないから、知らない誰かに撮られてもいいってことらしい。なんだそれ!?
大人が頼りにならないなら、とあたし達は作戦会議をすることにした。
休み時間、ビクビクして周りを見回すほののんを安心させるように、あたしとミッツが机を囲んだ。
「昨日、シャッター音とか聞こえた?」
あたしの言葉に、ミッツもほののんも首を横に振る。
「変な人もいなかったよね。ていうか、英会話教室への道って住宅街だから、すれ違う人がいたらすぐ分かりそう」
「うん。たまーに、犬を散歩させてる人とすれ違うくらい」
誰が撮ったかは、結局、分からない。
「あのさー」
ミッツが声を落として、手招きをした。
あたしとほののんは、ミッツへ顔を近づける。
「やったの、サンビじゃない? あいつ、スマホもPCも持ってないから、わざわざ新聞切り抜いたんだよ」
言われて、あたし達はサンビこと蛇ヶ崎美蘭の席を見た。クラスで1番日当たりの良い席に不釣り合いな、デブス。その上貧乏だから、週に3回は同じ服を着ている。
目を細めているサンビを見ててーーー髪型とかメガネとか、昨日のデブスと似ている気がした。
「もしかして、昨日の女と親戚なのかも」
あたしが言うと、ほののんとミッツが「そっか!」と頷いてくれた。
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