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保守
生意気な下級生、ふざけるのが大好きな男子達、そして、SNSであたし達を知った見知らぬ人たち。みんなが、あたしを、ほののんを、ミッツを見ている。
「最低だ」
「怖いやつだ」
「人の心がないから、そんなことができるんだ」
「お前が怪我をしてしまえ」
「お前も同じ痛い目を見ろ」
「○○○○してやる」
「こんなやつら○○○されて当然」
学校やSNSで言われる。そして、家へは無言電話がかかってくるようになった。電話番号を変えても変えても、しょっちゅう来る。
あたしを責める言葉と、なにも言わない不気味な言葉。
「なんてことしてくれたのよ!」
ママが怒鳴って、あたしを殴った。
「あたしじゃない! あたしじゃないもん!」
だって本当に、あたしがばら撒いたんじゃない。あたしが傷つけたんじゃない。
あたしはただ、見えたものを投稿して、みんなと笑い合ってただけ。
***
犯人がわかった時、あたしは中学2年生になっていた。と、思う。
学校に行けなくなって、朝か夜かしか違いが分からなくなっていたから、何年過ぎたかなんて、分からなかった。
その日、パパに呼び出されて1階のリビングへ行った。嫌だったけど、パパが強く引っ張るから仕方なく行った。
そしたら、そこにはミッツとほののん、2人の両親がいた。総勢9人。
ミッツとほののんは、あたしを見て固まった。あたしは、その反応に傷ついた。2人の言いたいことがわかるから、下を向く。
ていうか、2人が来るなら、言って欲しかった。そうしたらせめて、パジャマじゃなくってちゃんとした服をきたし、顔も洗ったのに。
大人達は妙にギスギスした挨拶をした。最後に会った時、誰がSNSの投稿を始めたかですっごい大喧嘩をしたのに、今更なんのために集まったんだろう。
「ご遺族の方から、預かってきた手紙があります」
ミッツのパパがそう言って、5枚の封筒を取り出した。
中から、何枚もの白い手紙が出てくる。
「この手紙が開封された時、私はすでにこの世にいないでしょう。年寄りからの最後の警告です。双見夢都美さん、葉苅穂乃花さん、八木沼美弦さん、心して聞いてください」
ミッツのパパとママがあたしを、ほののんのパパとママがミッツを、そして、あたしのパパとママはほののんを見た。チラッと、睨むように。
あたし達のことを投稿したのは、英会話教室に行くときに通り過ぎる住宅街の、お年寄りたちだった。何人かで協力して、たくさんアカウント作って。
「あなた達は何回か、庭から乱暴に花をむしり取って自撮りをしたり、ペットの犬にチーズをあげたりしていましたね」
ミッツのパパは、3枚の写真をテーブルに置いた。そこには、白い小さな花を髪にさしたあたし達の姿があった。だって、道路に出ていた花だから、摘んでも問題ないと思ったのだ。
それに、あの住宅街はいつも静かで、誰かがいればすぐにわかるはずだ。だからあたし達は、すれ違う人が誰もいないか確認した上で・・・
「誰も見ていない、なんてことはないんですよ。あなた達は実名で、顔も出して投稿していたから、すぐに犯行もわかりました。
ですが、あなた達は自分のしていることがどんなことか、全く分かっていなかった。世界は狭く、自分たちだけしかいないような振る舞いをしている子どもに、口で注意をしても理解できない。わたし達はそう判断しました。
だから、あなた達を晒し者にすることにしたんです。今まであなた達が、誰かをそうしてきたように」
ミッツもほののんも、そしてあたしも俯いていた。
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