ある男の戦い。

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ある男の戦い。

5分。 男はカップラーメンの前にいた。 隣に時計。秒針が時を刻む。 男はとても貧乏だ。 正確に言おう。貧乏大学生もどきだ。 もどきなのは、浪人を繰り返すから。 食費は切り詰めている。 だが下宿代と参考書や問題集。予備校代は欠かせない。 いや、何としても死守するのだ、それだけは! バイトと家族からの細々とした仕送りでやりくりするが、 給料日は明日。 そして買いだめした、最後の1個のカップラーメン。 今日の夕食ではない。 今日、唯一の食事。今日だけはこれで1日を過ごそう。 秒針が時を刻む。 その時。              ##  ピンポーン! チャイムが鳴った、誰だこの忙しい時に。 「○○新聞です。今ならラップと台所洗剤と洗濯セットを」 ドアを開けた途端、腕の中にひょいひょいと乗せてくる。 「しかもキャンペーン期間で1か月ダダ!」 ううむ、洗濯セットが魅力的だ。しかも1か月ダダだと? 駄目だ、負けるな俺。 新聞代を払う金など無い。 早くしなければラーメンが伸びてしまう( ̄▽ ̄;) 「新聞代、払う金はありません」 正直に言った。 すると敵は俺に渡したものを全部撤収して去った。 せめて、ラップ1つぐらい残してくれ。  俺はラーメンの前に座った。 すると、ピンポーン。また出た! 今度は、保険会社。 「金がありません」 またチャイム。 「私どもの神は貴方の苦しみを・・」 新手の宗教団体か。そんなに俺がひもじく見えるか。 実際、ひもじいが・・(-_-;) 「宗教はいらん、金をくれ!カップラーメンが伸びちまうだろ!」 イライラして、叫ぶと敵は逃げた。 「何でこの忙しい時に‥次々と、厄日か?(ー。ー#)」 イライラがこめかみに青筋を作る。 「マジでラーメン伸びるぞ。あと1分じゃないか」 すると、ピンポーン。          ##  キレた、もう我慢の限界(# ゚Д゚)キイイー! 猛ダッシュで玄関のドアを開け「うるさい!2度と来るな(#`皿´)」と叫ぶ。 いや、叫んでしまった。 「あ、あの旅行のお土産と思って、これ・・(((^^;)」 差し出されたのは菓子折り。 よく見ると隣の奥さんだ、彼女が抱いた園児が泣き叫ぶ。 ( ̄□||||!! 「ごめんよ、お兄ちゃんが悪かった。そうだ、お茶入れるから 一緒にこの菓子を食べようか?」 泣いた目が俺をにらむ。 そのまま母親の菓子折りをもぎ取り、力いっぱい投げた。 俺の顔面直撃(*_*) 「お兄ちゃんなんか、大嫌い!(`Δ´)」 「これ、綾香」 2人が去った。 悪い事をしてしまった。あとで謝らねば(-_-;)  そこで、ハッとした。5分、経ってしまった。 戻ると予想通りだった。 伸びたラーメンは涙の味がした( ノД`)シクシク…
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