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(何処だ、ここ?)
昨日の夜いつも通り自分の部屋で眠りに付いたはずの俺は、全く知らない場所で眠りから覚めた。
上体を起こし、その周辺を見渡すと、他にも人の姿が確認出来た。
白だけの無機質なその部屋の広さは良くわからない。
ただわかるのは、大人八人程がいても狭くはない程度の広さだということ。
俺以外の奴らも、この状況に訳がわからないといったような表情を浮かべていた。
『皆様、起きられましたかね?』
何処からか響く、少し高めの優しい男の声。
その発声場所を探してみるも、特定することは出来そうになさそうだ。
困惑する俺達にお構い無く、謎の声が淡々と話始めた内容は、その優しい声とは反対に残酷な内容だった。
『はじめまして。そして、さようなら。私と皆様方とのご縁が一瞬であること、大変残念に思っております』
「はぁ?何言ってっかわかんねぇよ。つーか、ここ何処だよ?」
その部屋の一人が謎の声に突っ掛かると、周りからも便乗して声を上がり、その部屋は少し騒然とし始めた。
『端的に申し上げますと、皆様の人生はあと5分となりました。あと5分の人生、悔いなきようお過ごし下さいませ』
そんな荒れた状況にも動じることなく、自分の告げたいことだけを告げてその音声はプツリと消える。
声が消えた代わりにその部屋の一部が機械的に変形を遂げ、カウントダウンを刻む時計と黒く光る俺達の命を狙う物が姿を現した。
「な、何だよ、これ…」
「嘘だろ、今のマジなのか?」
先程まで何かの悪い冗談だと思っていた俺達に突き付けられた拳銃のようなものが、この状況に現実味を与えていく。
この戸惑いを整理しきれない状況の中でもカウントダウンは刻々と進んでいた。
(こ、これが俺の最後なのか…本当に?5分で何が出来るって言うんだよ!)
その答えを探して周りを見渡すと、ただ泣き崩れる人やどこにぶつけたらいいのかわからない怒りを吐き出し続ける人、訳がわからなすぎる状況に笑うしかない人などそれぞれの行動をしていたが、その中に俺のしたいことは一つも見つけられなかった。
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