あと5分

　ピピピピ……ピピピピ……。
「タカシ！　そろそろ起きないと、学校に遅刻するわよ！」
「あと5分、あと5分……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「タカシ！　いい加減、起きなさい！　だから、早く寝るよう言ったのに！」
「あと5分、あと5分……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「タカシ！　お母さん、パートに行ってくるからね！　ちゃんと朝ごはん食べて、学校行くのよ？！」
「あと5分、あと5分……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
　ドンドンドンッ！
「タカシ！　早く逃げて！　おかしな連中がアンタを狙ってるわ！」
「あと5分、あと5分……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「ちょっとアンタ達！　なんなの、いきなり他人（ひと）の家に押しかけてきて！」
「こいつも連れて行け」
「へい」
「ちょ、ちょっと！　離しなさいよ！　アタシはどうなったって構わないけどね！　あの子に何かしたら、タダじゃおかないよ！　タカシ！　タカシーッ！」
「あと5分、あと5分……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「タカシ君、悪いことは言わない。今すぐここを開けるんだ。君は危険な地球外知的生命体に狙われている。奴らは特異点である君を消し、この星を制圧しようと企んでいるんだ。急げ！　あと5分もすれば、君はこの街ごと消滅させられてしまう！　一刻も早く、安全な場所へ避難するんだ！」
「あと5分、あと5分……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「ぐああっ！　なんだこの光線は？！」
「これが、奴らの兵器？！」
「街が……体が……消えていく……！」
「くそっ、ここまでか……！」
「あと5分、あと5分……」

　ピピピピ……ピピピピ……。
「ウニャラウニャラ（人間よ、早く出てこい）」
「ウニャ、ウニャラニャラ（もうこの星にはお前しか残っていない。観念しろ）」
「ウ、ウニャラ！（この星はもう、俺達のものだ！）」

　ピピピピ……ピピピピ……。
　カチッ。
「ウニャッ？！　ウニャララ？！（おい、街が戻っていくぞ？！）」
「ウニャラウニャラ？！（どうなっているんだ？！）」
「ウニャラウニャラウニャラ？！（まさか、これが特異点の力だというのか……！）」

　　　　　・

「ふぁぁ……よく寝た」
「タカシ！　そろそろ起きないと、学校に遅刻するわよ！」
「やべっ！　今日、日直だった！　でも変だな？　1時間くらい寝過ごした気分なのに、目覚ましキッカリに起きるなんて……ま、いっか！」

（終わり）