あと少し

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 あと五分。  あと五分で発車ベルが鳴る。  思い出のフィルムが脳裏に流れる。  雪深い山間の村、真っ白な世界で彩り豊かに浮かび上がるのは出会いの記憶。  雪解けに芽吹くのは心も同じ。手を取り溶け合う。  厳しい暑さに骨身を削られ、渓流のせせらぎが二人を別つ。  山紅葉は燃える紅。再び手を。  でも、もう遅かった。  雪の嵐は世界を白く塗り潰す。  もう、花咲く景色は戻らない。  この手の温もりは、あと少し。  あと五分。  あと五分だけ。
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