01-01 成人の儀

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鉄でできた頑丈な扉だ。 力いっぱい引いて、ようやく少しずつ動き出すほどに重々しい。 扉の奥にはレンガ造りの壁があり、子供の目線の高さあたりが、煉瓦一つ分、くぼんでいた。 覗き込むも、明かりは通らず何も見えない。 恐る恐る手を伸ばして中を探ると、間もなく硬い鉄の壁にあたった。 四角い輪郭がある。どうやら箱のようであった。 引き寄せ、明るみに出して見ると、箱は鎖で縛られ封がされていた。 常人であれば、開けることも諦め、ここにおいてゆくだろう。 ところが、白の一族の子供、中でも正当な後継者たる俺には、暁の瞳と呼ばれる、金色の瞳が備わっていた。 暁の瞳は、常人には視えない、光と闇を映し出す。 俺の目に映っていたのは、箱に群がる、無数の黒い影たちだった。 黒の精霊だ。 精霊たちは、ここから出せ、ここを開けろと鎖にとりつき、俺の指を乱暴に引っ張る。 凍るような冷たい感覚があった。 指先が、鎖のいっぺんに触れたのだ。 すると、がんじがらめに見えていた鎖は、呆気なく解け、箱がわずかに開いた。 隙間から漏れ出す、呪詛にも似た低いうめき声に、血の気が引いていく。 <奪え、殺せ、支配せよ……> 声は絶え間なく耳元でささやく。 「わかった?」 大きな手が、箱を閉じさせる。
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