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子猫のティーアが、獲物を狙うように精霊たちをにらみつけると、たちまち精霊たちは「わぁっ」と声をあげて、どこかへ隠れていってしまった。
「兄様に朝の挨拶に行こう。その後は蒼の国へ。ここはうるさくてかなわないよ」
語りかけつつ、寝巻きを脱いでローブを引っ張り出す。
その間も、ティーアは静かに、ベッドの上で丸くなっている。
なんて利発な猫だろう。
精霊たちに、爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
齢にすれば、精霊よりか、ずっと若いはずのこの子猫は、使い魔にしてからというもの、子猫らしいやんちゃをしたことがない。
物静かで従順、賢く上品だ。
僕にはもったいないほどに、よくできた使い魔である。
魔法の手伝いも、十分にこなしてくれる。
「さぁ、準備ができた。ご飯は姉さんに食べさせてもらえたかい?」
ティーアは「みぃ」と小さく鳴いて答えると、僕のローブを駆け上り、いつもの肩の位置に陣取った。
しばらく前足でフードのあたりを踏んだあと、納得した様子で腰を下ろす。
部屋を出てからも、ティーアは肩の上を微動だにせず、やはり静かに主人に寄り添うのである。
騒がしいこの国において、ティーアは僕の唯一の癒やしと言っていい。
言葉を話さないことに加えて、おせっかいがないところも、僕のお気に入りだ。
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