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精霊たちも騒いでいたように、僕は前の王と女王の間に生まれた、十三人の子どもたちのうち、十三番めに生まれた末の子供だ。
十三は忌み数字、この世界を作った女神様が亡くなられた日付なのだという。それ以外にも理由はあるけれど、とにかく僕は、この王家にとっては疎まれる存在だ。
生かすも殺すも恐ろしい。
中途半端に生かされ、なんの仕事も与えられていない、意味のない存在だ。
では、他の十二人の王子王女はどうしているか。
これは、今から会いに行く兄様に聞けば十分だ。
この兄様こそ、最初の嫡男にして、今のこの国の王である。
その技量は「賢王」と呼ばれるほどに評価されており、右に出る者はいない。
他の王子・王女にも見合った役職を与え、城中の仕事の一番上に立って仕事をさせている。
騎士隊長、資料管理者、果ては料理長まで。
望む職を与えている。
もちろん、民の統治を志す兄弟には、領地を与えて土地を収めさせている。
ゆえに、これだけの兄弟がいても、全くといっていいほど争いは起こらない。
皆が自分の仕事や地位に満足しているからだ。
僕を除いて。
王の間の扉が見えてきて、僕は足音をひそめる。
城に来た民は、ここに来るだけで、石のように固まってしまうそうだが、僕にしてみれば、ただの家の一角に過ぎない。
石と布と金でできた、ただの作り物に囲まれた部屋。
部屋よりも兄王本人の方がずっと苦手なのだ。
馬の合わない感じがする。
僕はため息混じりに扉をたたき、返事も待たずに中へ足を踏み出した。
この国を飛び出して、早く隣の蒼の国へ行ってしまいたかった。
あそこはいい。
人間しかいない、誰も僕を忌子として見ることはない。
「おはようございます、兄上。朝のご挨拶にうかがいました」
「ヒューズ!! お前はまた!!」
金切り声をあげたのは王じゃない。
王様だったら、こんな小物の物言いはしない。
王の隣で羊皮紙を広げていた、二番目の兄だ。
王の補佐をしているこの兄は、丸メガネをかけ、頭はまだ若いにもかかわらず脳天が禿げ上がっている。
ガリガリに細い体は、今にもへし折れそうだ。
「扉は返事の後に開けるよう、あれほど言っただろうに! お前の頭は木の実の隠し場所を忘れるリスよりも阿呆なのか」
「そのままにょきにょき~っと木が生えて、次の春を迎える。すると数年後には新しく立派な大樹が大地に根付くわけですね。リスとは英雄ですね。命のめぐりに携わる崇高な動物に例えていただき、心より感謝申し上げます」
「お前は……!!」
補佐はなにか言いかけたが、口を開いたまま凍りついてしまった。
我ながら寒い冗談だと思ったのに。
同意するように、ティーアが大あくびを吐き出す。
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