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「…この遺跡、最近発見されたんだよ。素晴らしい保存状態で、とても綺麗だ。実はこの一室で二人分の骨が見つかったんだ。二人寄り添って、とても仲睦まじい様子だった。僕らのご先祖様なのかもしれない。その骨の近くには名前らしいものが書いてあるタグがあって、“Type:ADAM《アダム》”“Type:EVE《イヴ》”と書いてあったんだよ」 「Type:ADAMとType:EVEがこの世界を作ったの、お父さん?」 「そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。間違いなく言えるのは、僕らが今こうして生きているのはこの二人のおかげってことだよ」 父親に肩を抱かれた少女が、吹き抜ける風に頭の帽子を押さえた。 遺跡近くの丘から見える景色は、限りなく澄んでいる。 野生の動物がすぐ近くを駆け抜け、ラシトリアギアムの美しい花弁が風に舞う。その側には共生関係にあるヒラミビオンヌも咲き乱れていた。 少女はその景色に笑顔を浮かべ、小さく呟いた。 「…この星は素晴らしくなったわよ、Type:A。早く、また巡り合いましょう…」 少女の呟きに、父親は首を傾げた。
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