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Type:Eの言い分はこうであった。 僕に身を案じられ閉じ込められ、考えた結果…自分に出来る事は卵を産んでこの星で生きられる抗体を持った個体を産み出す事であると。 そんな結論に至ったらしい。 Type:Eの手足の枷を解き、僕はそのまま身体を重ね合わせた。 思い出した。Type:Eに感じていた不思議な感覚。 あれは発情期であり、求愛の状態であったのだと。 僕らは300年経って初めて、生殖という行為をする(つがい)の関係になった。 身体を重ねる度にType:Eが愛おしく思え、優しく抱きしめた。 ◇◇◇ あれから船内のいたる場所に卵を産んだType:Eは、その度に多大な体力を使い、発作をよく起こすようになってしまった。 いつでも気泡を吸引させてやれるように、僕もほとんど外には行かなくなってしまった。最近はずっと二人で寄り添って眠り、Type:Eの体調次第で交尾をするという生活を送っていた。もう外の環境や動植物がどう繁栄していっているかも分からない。 ◇◇◇ どれだけの時間が経ったのか分からない。 ある日を境に船内に緊急警報が鳴るようになり、バッテリー稼働の残り時間を告げるようになった。 “ーー残り5分で浄化槽機の稼働が終了します、バッテリーの回復作業を行って下さい。浄化気泡精製作業終了まで、残り5分を切りましたーー” 僕らの発作を起こす頻度はすでに、一分毎程になっていた。 身体の限界と、バッテリーの限界はほとんど一緒にきたようだ。 出来るだけType:Eに生きて欲しくて、吸引チューブをその口に押し当てるが、子どものように嫌がる。 「残りは、二人で分け合おう。最期の瞬間まで、君と生きていたいよ」 息も絶え絶えのType:Eが泣きながら言う。 僕は焦れてしまって吸引口から気泡を吸うと、経口から強引に摂取させた。 口を移して送られる気泡を拒否する事は出来なかったらしく、Type:Eは大人しく受け入れる。時折口から洩れる吐息に、僕は舌を絡めた。 緊急警報は、僕らの意識の続く限り鳴り響いた。
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