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2人のアクアリウム
その日は、ジンベイザメのレオくんが世間にお披露目される日だった。
高校生だった当時はテレビで見られれば充分だと達観していたが、ルカはそれを許さなかったようだ。
「行こうよ!!」
「いや何でルカと……」
この当時は、まだ付き合ってもいない。
だが2人の付かず離れずの雰囲気にクラスメイトは気付いていた為、遠巻きでそれを見守っていた。
そのクラスメイトの1人がルカにレオくんの事を教えた事で、ルカはそれに興味を持ってエイトを誘ったのだ。
「こんなの見れる機会ないじゃん!」
「だからってルカと行く意味が……」
目を逸らして拒否していたが、少しだけルカの方に目をやると思わず驚きの表情を見せる。
悲しそうな顔だけじゃない、泣きべそをかいてるかの様にじわりと涙が溢れていた。
その瞬間、クラスメイトの嫌な視線がエイトの周囲に突き刺さる。
このまま放置してしまったら、完全に悪者になるだろう。
大きく溜め息吐き、この場は折れた。
下校時間、半ば強制的に引っ張られ訪れた水族館。
財布の中身を気にしつつ中に入り、目的の水槽の前に辿り着く。
既に多くの客が水槽の前にひしめき合っており、これじゃ見えないんじゃないかとルカは少し落胆している。
だがエイトの目は、人のいない水槽の上の方に向けられていた。
「あっ……」
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