水族館のアクアリウム

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水族館のアクアリウム

水族館の巨大水槽の前、2人の男女が中を眺める。 大きなアクアリウムには、海水魚がたくさん泳ぎ回っていた。 エイやサメみたいな大きなものから、アジなどの小魚が大量に泳ぐその光景は、思わず目を奪われる。 「魚、綺麗だね。エイト」 「そうだな、ルカ」 自然と手を繋げる2人の関係は、恋人同士。 高校の時に付き合い、今日で6年目。 公務員勤めのエイトと看護師勤めのルカは、恋人以上の所に踏み出せずにいた。 付き合った記念日に水族館に来たのだが、終始和やかな空気のまま決心した話に持って行けずに、どうしようと焦りを見せるエイト。 ルカはそんな気持ちを知ってか知らずか、純粋に水槽の中の魚達を眺め続けている。 「次の水槽に、イルカがいるって。行かない?」 そう提案するが、ルカは水槽の前から動かず「あと5分だけ」と呟く。 ずっと同じ水槽を眺めているようだが、何かを探す素振りも見える。 「何か探してるの?」 軽い気持ちで問いかけると、少し寂しげな顔で返答した。 「昔、この水槽に“レオくん”っていたよね?」 彼女が言っているのは、高校時代にこの水槽で飼われていたジンベイザメの事だった。 大きな体で優雅に泳ぐ姿は誰もが目を奪われる存在で、みんなからはレオくんと呼ばれていた。 それを思い出したエイトも、水槽の中を覗く。 あれだけ大きな体なら居ればすぐ見つかるのだが、明らかに姿は無い。 「死んじゃったんじゃないかな?俺達がここに来たの高校生以来だし」 「そっか……。仕方ないから次に行こう」 また、話を切り出すタイミングを見失った。
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