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「俺は今工場勤務だよ。鍛造っていって鉄を潰す仕事」 「潰すの? ふふふ。よくわからないけど亮介っぽい」  俺っぽいって何だよ。なんだかムカッとした。俺の人生は甲子園のためにあったと思っている。いや、思っていた。だから試合に負けた時、生きる意味を失った気がして自暴自棄になった。大学からのスカウトもなくて、しょうがなく就職したのが今の工場ってだけだ。流される人生が俺っぽいって思うのかよ。 「亮介なんか昔と変わってないよね。日に焼けて顔まっくろ」  それは見た目だけだろ。中身は変わったよ。社会人になって責任ってやつも持った。今は守らないといけないものがある。夢だけ追っかけて好き勝手してた昔とは違うんだ。あの頃と変わらないだって? もし変わらないのなら俺だってあの頃みたいになりたい。 「そんなことないさ。明日香こそなんも変わらないよな」 「変わらない? 私の今の姿を見て本当にそう思うの? 大人の色気とか感じないの?」 「違うよ。性格がさ」  明日香は見た目こそ変わったけど、会話の節々から幼さが顔をだす。そういう所が変わってないんだよな。それはある意味、褒めてるつもりだったんだけど明日香は思い詰めた顔をした。 「そうだよ。私は変わってない」
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