chapter,1

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   * * *  徹夜で論文を書いていて判断力が鈍っていた自分にも非がある。  あのとき小手毬に手をひっぱられていなかったら、小手毬に庇われていなかったら、優璃の車にはね飛ばされていたのは小手毬ではなく、自由だったかもしれない。  毎日、毎日、病室に通う。  毎日、毎日、人工呼吸器に繋がれた少女の寝顔を見る。  毎日、毎日、毎日、毎日。 「あれ、君……」  どのくらい、毎日が続いただろう。  ぼんやり、病棟に続く廊下を歩いているときに、呼び止められた。  白衣の胸ポケットに「医師 陸奥(みちのく)」と書かれた名札がついている。  ムツと読む人間が多いからか、ミチノクとフリガナがついている。  見たところ、自由より少し年上の、二十代後半から三十代前半のようだ。医師としては若手に入るのだろう。整った顔立ちに、しわひとつない白衣がさまになっている。  どこかで見たような顔だと思ったが、毎日のように病院に通っているのだから見たことがあるのは当然かと考え直す。自由は院内でも有名人になっている。眠り姫に会いにくる王子様として。
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