chapter,1

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 大学は夏休みに入っていたから、単位に悩まされることもなかった。  それに、いつだって自由は小手毬に会いたい。たとえ眠りつづけている姿でも。 「面会時間内に行くのは、自由ですから」  言い返す。すると、憐れむような表情を向けられる。 「いつ目覚めるかもわからないのに?」  ……コイツ、喧嘩売ってるのか? 「いつ目覚めるかもしれないから、会いに行くんです」  怒りの声に震える自由を、陸奥は面白そうに見つめている。 「千五百分の六」 「……は」 「交通事故で植物人間になった患者が意識を取り戻す確率。要するに二百五十人に一人しか助からない」  ごくり。唾を飲み込む音が響く。  尚も陸奥は続ける。 「俺が言いたいのは、奇跡に縋ることしかできない王子なんか邪魔なだけだってこと」 「なっ……」  絶句する。  ……お前それでも医者か?  そう叫びたくても、病院の廊下で叫べるわけもない。  憤怒の形相で相手を睨みつけることしかできない。
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