chapter,1

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 一刻も早く開頭手術を行い、血腫を取り除かなければ彼女は助からない。ちいさな頭蓋は陥没こそしていないものの、傷だらけだ。損傷後の脳浮腫、挫傷性出血で脳内の圧力はかなり高い。腫れあがる脳を鎮めるため、脳圧を下げるべく薬を選択する。  血腫を取り除き、早咲は縫い合わせ作業に入る。ここまでくると、固唾を飲んで見守ることしかできない。  はじまりからおわりまでいつも以上に苦しい、はちきれそうな緊張感が続いていた。たいした時間ではないはずなのに、一日の半分以上を費やしてしまったような、そんな大手術だった。  やがて早咲が手を止める。  息を飲む。  手術室からストレッチャーに乗せられた少女が前を遮り、集中治療室へ移送されていく。  両目を充血させ、患者の無事を祈っていた家族の縋るような視線が早咲に向く。 「たったいま、娘さんの手術が終わったところです」  そして、早咲は残酷な未来予想図を淡々と紡ぎだす。  少女の家族は、蒼褪めた表情で、現実と向き合うことになる。 「一命は取り留めました……」  陸奥は居たたまれなくなり、無言で一礼して、彼らから離れていく。 「が」
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