chapter,1

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   * * *  小手毬の昏睡状態は続いている。 「人形みたいな女の子ね」  毎日、花束を持って病室に見舞いにくる女性を、自由は無表情で見つめつづけた。  最初のうちは言葉を交わすのも嫌だった。  あまりに子どもじみているとは思う、だが自由は彼女を許すことができずにいる。剥き出しの憎悪を吐き出して更に惨めになるよりは、自分の殻に閉じこもって外部からの接触を遮断した方が無難だと、そう考えたから無視していた。  だが、時間の経過とともに、自由も冷静になった。  いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。彼女が目覚めることを信じて、優しく見守りたいと、そう思ったから。  加害者を許すことはできない。それでも、無言の逢瀬を二ヶ月ほど続けたある日、会話をするようになった。  小手毬も、彼女を責めるようなことを望んではいないだろう。彼女はそういう子だ。 「授業はよろしいの?」 「夕方になったら戻りますよ」
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