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転校生
夢と違って死体が上がったなんてメールは来る事はなかった。
次の日、怠い体を引きずりながら学校に行くとクラスがいつもよりざわついている。
「なぁなぁ、転校生が来るんだってよ!しかも、2歳も年上らしいぜ?ずっと寝たきりだったんだってよ。留年ってやつ?本当にあるんだなぁ、こんな事」
テンション高めで斉藤が絡んできたが俺は反応する事なく机にうつ伏せになった。
転校生なんてマジでどうでもいい。俺は昨日あまり眠れなかった。あの変な夢のせいで…。
「ほらーー!!席につけ!!」
いつもの様に担任のゴリ川が荒っぽい口調で教室に入ってきた。
ゴリ川は開けっぱなしのドアに向かって手招きをした。それと同時に女子達のざわめきが聞こえてくる。
教壇のほう見ると、ゴリ川の隣に背の高い色白で爽やかなイケメン野郎が立っていた。
これは女子が喜ぶ訳だわ。
「河本 碧です。宜しくお願いします」
お辞儀をした後恥ずかしそうにはにかんだ顔に尽かさず女子達が反応する。
「河本くんは、訳があって皆んなより2歳年上だ。でも年齢は関係なく同じクラスメイトになったんだから仲良くする様に!!席は…、斉藤の隣が空いているな?河本くんすぐ席替えするから暫くその席で我慢してくれ」
ゴリ川の言葉に何人かの笑い声が聞こえた。
「先生酷いっすよーー!!俺ちゃんと面倒みますって!!」
「面倒をみてもらうのはお前だろ!!」
斉藤とゴリ川のやり取りにクラス中がどっと笑った。それにつられてイケメン転校生も笑顔になった。
その時、イケメン転校生と俺との目がしっかり合った。
覚えのある湿った生暖かい風が俺の頬を撫でてくる。
また一瞬時が止まったようなあの不思議な空間になった。
まさか……。だって昨日のそいつはランドセルを背負っていた筈。
星の光は何年もかけて地球に届く。あんなに近い太陽だって8分かかり、シリウスの光は8年、もっと遠い星は何十、何百、何千、何億と時間をかけて地球に光を届けるのだ。
もし、あの時そんな時間が生まれていたら…?あの長い夢がたった10分だったみたいに…。
俺がそう思った時、イケメン転校生は笑いを堪えているように手で口を押さえて肩を震わせた。そして嬉しそうに目を三日月型に細めた。
その後、クラスの笑い声が一斉に俺の耳に飛び込んで来た。
「じゃあ、河本くん席に着いて」
「はい」
そいつは俺の方へ一歩一歩近づいてくる。
仕方ない、だって斉藤は俺の斜め後ろなんだから。
気にするな!!気のせいだ!!
俺は落ち着かず親指を噛みながら貧乏ゆすりをしていた。
そいつは俺の目の前でよろけた。
俺の机を掴み身体を支えるようにして耳もとで囁いた。
「分子くんよろしくね」
ー終わりー
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