死体

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俺はその気味の悪い橋に着くと自転車から降りて、携帯のライトで照らしながら死体を探し始めた。 斉藤より凄い物って言っても他にインパクトのある物なんて思い付かなかっし、結局俺は死体を探すしかなかった。何処にあるか分からない死体を探すのは、小さい頃に大好きだったアニメの名探偵になった気分になり、正直かなり心が踊っていた。 色んな場所を照らしていると、鬱蒼と生えている草の一か所から小さな物音が聞こえてきた。 俺は何かがあると思い興奮しながら音のする方にライトを照らしてみると…。 ライトの先にあったのは子猫の死骸だった。 「うぉっ!!」 死骸の上に小さな虫が沢山飛んでいるのを見て音の正体はこの羽音だと気が付き、もっとよく見える様に近づきながらライトを当てると子猫の体から無数の小さな白い虫が湧いてるのがはっきり見えて、俺はさっき胃の中に流し込んだカレーが喉まで戻ってくる感覚に襲われた。 「うえーーっ。ダメだ!嫌な物を見ちまった……。もういいや帰ろう」 自転車の方へ戻ろうとした時だった。 ぼろい橋のたもとから緑色の光がチラチラと見える。俺の携帯の光に反応しているのかもしれないが、それはまるでモールス信号を送っている様に俺の身体は緑の光への方へと吸い込まれていった。 その光はクソ汚い川に落ちるか落ちないかのギリギリな場所にある石から放たれていた。500円玉位のその石に一歩一歩近づくにつれて緑色の光は強く鮮やかになっていく。 その石に手を伸ばした時。 「ダメだよ。触っちゃ」 後から声がして俺は伸ばした手を慌てて引っ込めた。 振り向くと小学校5.6年生位の男の子が立っていた。そいつは夜7時を過ぎているのに何故かランドセルを背負っている。暗い夜空とランドセルはなんだか似合わなくて、とてもちぐはぐな感じがした。 「その石は化石だよ」 「化石?すげーじゃん」 「そう、凄いよ。でもそれに触れると大変な事になるかもしれないよ?」 と、手にしている何かをゆっくり撫でている。 男のくせに人形でも持っているのかと思ったがそいつに携帯のライトを当てた瞬間……。 呼吸が数秒停止した。 「うわぁ!!お前何抱いてんだよ!!」 そいつの腕の中にいたのはさっき見つけた子猫の死骸だったからだ。 「可哀想に……。この子もその石に触っちゃったから、こんな姿になっちゃったんだ。小さい子だからね、仕方ないかもしれないね」 そう言ってその子猫に顔を埋め頬ずりをしている。 俺はそいつの行動にまたカレーが喉まで戻ってくるのを感じていた。
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