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あと23時間55分
俺、正は時間を持て余していた。
24時間後に、憧れの女性とのデートだ。
そういっている間に、23時間59分52秒、51秒、50秒、49秒……。
数えていてもきりがないのでやめるが、要は待ちわびている、ということだ。
というのも、2年前の春、俺は大学に入学し、デート相手の女性に一目ぼれをした。
それからは、きっちりと毎月15日の10時、大学の正門前、灰色のパーカーに黒のジーンズ、「一目ぼれです。俺と付き合ってください」、いなければメールで送信して、……(以下略)を2年繰り返し、やっとデートをOKしてもらえた。
まだ付き合ってはいないが、明日のデートが第一歩目だと気合を入れていた。
失敗してはいけないと、準備を一か月前に始めた。
きっちりとしたスーツを買い、行く場所のプランを立て、どの道を通っていくのか、何時にどの場所に行くのかを秒刻みで考え、初めてのデート入門書も片っ端から読み、そわそわして夜も眠れない日々を過ごすのも、何もかも一週間前には終えていた。
故に暇なのだ。
待ち合わせは明日の10時ちょうど。
今の時刻は10時3分48秒。
いつもならこの時間帯はバイトなのだが、急な予定変更に備え、休みをもらっている。
故に暇なのだ。
しかし、無駄に時間を過ごすわけにはいかない。きっちりと何か予定を入れなければ、吐きそうになるほど気持ち悪くなる。
明日のデートのためにできることはないか。
そういえば、皆は俺のことをよく「きっちりとした人」などと言う。
人を知るにはまず自分を知るべしと、7冊目に読んだデート入門書に書いてあった。
ならば、明日のデートのためにそれをしよう。
デートまであと23時間55分
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