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あと23時間5分
俺、正は小学生のとき、学級委員長をやっていた。
みんなが決めるときに口をそろえて、
「正くんがいいと思います」
といったのだ。
理由は「学校のことを一番大切に思っているから」だった。クラスの委員を決める理由として学校を持ち出すのはどうかと、今になって思う。
俺はただ、掃除当番でもないのに、毎日机をきっちりと並べ、さらに他のクラス、学年の教室のもやっていただけだ。全16クラスなんて馴れれば大したことではない。
また、図書館にある本の並びを毎日昼休みにチェックし、名前順、巻数順に並んでいなければ、きっちりと直していただけだ。きれいに並んでいるときは俺の調子もよかった。
他にも数多くの理由を箇条書きにされ、俺は学級委員長となった。もちろん、責務はきっちりとこなし、卒業した。
そして思い出した。
あれは小学4年生のとき。俺は一緒に学級委員長をやった女の子に恋をしていた。
その子の名前は、ゆかちゃん。きっちりとした前髪の子だった。
横一線にそろえられた前髪と後髪が、櫛でとかされてさらさらとしていた。見てみて非常に気持ちがよかったことを覚えている。
何より、紙の隅をきっちりと合わせて折れることに、当時の俺は心を奪われていた。
しかし、気持ちを伝える前にその子は転校してしまった。俺は気持ちを伝えることができなかった。
その事実を思い出した瞬間、気持ち悪くなる。もやもやとしたものが胸を這いずり回り、息が苦しくなる。こんな状態で明日のデートなんか行けるはずがない。
あのときの俺はまだ小学生でどうすることもできなかったが、今は違う。大学生で、もう大人なのだ。
だから、俺は立ち上がった。ゆかちゃんにあのときの気持ちを伝えるために。
そして謝ろう。今好きな人がいて、明日デートなのだと。
ついでに、学級委員長を最後まできっちりやっていないことも伝えようと、紙にメモをした。
ゆかちゃんを思い出し、端をきっちり合わせて折り、ポケットに入れる。
部屋のドアをきっちり閉めてから飛び出した。
デートまであと23時間5分
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