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幾日か過ぎた早朝に、コテージの扉を叩く音が聞こえた。
「ようツネ。
お前、携帯電話鳴ってただろ?
寝てたのか?
仕事だ。
今度は・・」
ようやく、ぐっすり眠れる安息の地を見つけたと思ったら、またこれか・・
しかし、あのレインドロップスを壊滅させたと言うのに、まだ何かあると言うのか。
そんな俺の気持ちを察してか、
「まぁ、この国の闇は、レインドロップスだけじゃないってことだろ?」
・・まあ、それはそうか・・
そのために俺たちは存在している。
そのために、muzzlkaなんて言う大袈裟なライセンスがあるんだろう。
『生きることは闇を孕む。
生きることはキレイなことだけじゃない。
それでもキレイでいようとするから、キレイでいられるんだ。』
俺は、出かける準備をしながら、そんなことを考えていた。
それから、お気に入りの白い糸で縫製されたダークグレイのスーツを着込み、愛銃を腰のホルターに差し込んだ。
今回は、予備マガジンはひとつで足りるか。
でも、バタフライナイフはふたつ要るか・・。
「シズク、留守番を頼む。」
そう言うと、シズクは
「わかった。ミオと待ってる。
お土産買って、必ず帰ってきてね。」
そう言って俺に笑いかけた。
俺はまたこの笑顔を見たい。
そのために生きて帰ってくる。
絶対に。
俺は車に乗り込み、助手席にジンを乗せた。
キーをまわしてエンジンを起動させて、
「ジン、今度も生きて帰るぞ。」
そう言うと、
「当たり前だろ?」
と言うジンの返事が軽い笑みと共に帰ってきた。
ジンの着込んでいるロングスーツは、今日は艶のある漆黒で、縫製は赤い糸でされていた。ひどくスタイリッシュで、俺もそのスーツが欲しくなる。
ともかく、そのスーツはジンによく似合っている。
さて、仕事だ。
出掛けよう。
車の中で、
「お土産、なににすっかな?」
と、のんびり尋ねるジンに、
「そんなの、蜜入りリンゴで決まりだろ?」
そう言うと、
「それ、決まりだな。」
とフッと笑いながら答えるジンだった。
そして、俺達は車を北に進めた・・。
おわり。
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