あの日の事。

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俺たちが連行された場所は、都心から車で約3時間の距離にある、美しい湖畔のそばにある、自然に溶け込むように建設されている2階建ての建物だった。 俺は、自分の左右を体躯のよい男に囲まれ、護送されるような形で、その建物の2階のほぼ中央にある応接室に通された。 大理石の床、高い天井にはシャンデリアがぶら下がっている。 その部屋の窓際にある一枚木で出来ているテーブル越しに、胡桃色のソファ型の椅子、プレジデント椅子と言うのだろうか。 それに腰かけた人物が、 「ようこそ。」 と、そう言って俺の目を見た。 この人は、ここで一番偉い人なのだろうか。 「君の働きは聞いている。 あの事件のことはすぐに隠蔽されるだろうが、問題はそこじゃない。 レインドロップスの連中に圧力をかけることが出来た所に要点があるのだ。」 隠蔽される? どういうこだ? しかし、そんな疑問とは別に偉い人は続けた。 「これからのことは、彼に聞いてくれ。」 そう言われて、プレジデント椅子の隣に立っていた人物が俺に近付いた。 そして、 「久しぶりだな、『148』。」 と、そう言ったのだった。
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