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クローゼットの中で
「いいかい、朔。出てきていいと言うまでは出ちゃだめだ」
「う、うん。わかった」
朔と呼ばれた少年はクローゼットの中で頷いた。
彼の父親はゆっくりと、クローゼットの扉を閉じる。
クローゼットの中は闇に包まれた。朔は闇の中で息を潜めた。
遠くから、男たちの怒号と両親の叫び声を朔は聞いた。
クローゼットの扉に耳を当てて、声の内容を聞こうと耳を澄ます。かろうじて『世界の秘密』というフレーズを父が叫んだことはわかったが、声をどんどん遠くなり、朔は自分の呼吸の音以外は聞き取れなくなった。
朔は父親の言いつけどおり、いつまでもクローゼットの中で待ち続けた。
夜になって、朔は耐えきれずに、クローゼットから抜け出した。朔は両親を待ったが、二度と両親は帰ってくることはなかった。
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