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白い息が出るほど洞窟は寒いのに
寒さを忘れるほど顔も体も熱い。
ハインは変な声がでないように縛られて不自由な両手を震わせながら自分の口を必死でおさえて耐えていた。
ザミヘルの2本の触手が服を乱して体の上半身に片方が絡みつき、もう1本は下半身へと潜っている。
ハインが声を我慢しているのはこの場にはザミヘルだけではないからだ。
無表情で触手をウネウネと動かしているザミヘルは彼を攻撃してきた獣人の男と蠍の尾で攻防しつつハインを間に挟んで交戦しているのだ。
つまり見せつけるように獣人の目前で堂々とハインに痴漢行為を現在進行形でやってのけ挑発しているようにも見える
「恥を知れ!?魔物が!!」
と怒鳴っている獣人は重そうな鎧を装備しているとは思えないほど俊敏な動きでザミヘルに近づき剣で切りかかるが、それを読んでいたかのように伸縮自在の蠍の尾が金属音をたてながら剣をはじくこと数回…
勝負がつかないのは互いの魔法はぶつかって消滅し
魔法ではダメージをあたえられなかったのと
ザミヘルが獣人とハインで遊んでいるからだッ!
冒険者との間に入って邪魔をして不興をかった俺はザミヘルに両手を縛りあげられ触手の相手をさせられているところにタイミングの悪い獣人は攻撃をしてきて…
純粋に魔物に襲われている俺を助けてくれようとしたんだと思うんだ
たしかに襲われていたけれど俺の場合は命の危険はないわけで
突然の攻撃にもかかわらず獣人の攻撃を躱したザミヘルが
俺の尻を触手で貫いたまま獣人との戦いをはじめてしまい
俺は俺で場違いな快感に悶えながらも獣人に軽蔑しきった目で見られぬように男の尊厳がかかった負けられない戦いを強いられていた。
(俺がザミヘルにイかされる前に決着をつけてくれッ!!)
触手の動きが激しさをまし涙目になったハインの口に当ててた手が外れて
着崩れた服から右胸があらわとなり巻きつく触手が舌の動きを真似てペロリと真っ赤に熟れた先端を何度も往復するように動いているのが見てとれた。
「っ……ぁ、はぁあん!!」
(・・・最悪だ。)
とうとう場違いな声をあげてしまった俺は口を開いたまま体を硬直させ
ザミヘルを攻撃しようとしていた獣人はハインの声に驚きその胸を目を見開いて凝視していて
動揺したのか獣人の剣がザミヘルではなく手前にいるハインに迫っていた。
目をつぶった俺には何がどうなったのかは分からないけれど
目を開けたら地面に落ちてるザミヘルの切られた蠍の尾と床で回転している剣があり
うつ伏せに倒れた獣人と俺を抱えたままその背を踏みつけているザミヘル。
「ッ……!カハ、、…」と獣人の口端からもれ出た一筋の血が流れて床にポタポタと落ちてザミヘルを睨み上げていた瞼は閉じられて動かなくなたのだった――…
「なッ!な、なんだコリャァあ"あ"あ?!俺の体に何をしたァ!!」
絶叫している獣人は自分のフサフサの尻尾があった場所を見るなり耳を力なく垂れ下げて両腕を地面について受け止めきれない現実に打ちひしがれていた。
獣人にとってもっとも大切な人間でいえば自慢のパーツであり美醜の決め手となる尻尾が
あろうことか蠍の尾に変えられていたらこんな反応になるのではないだろうか?
人事ならぬ獣人事ではあるが同情しつつ自分の尾のことで頭がいっぱいの獣人が俺の醜態について忘れていることに感謝していた。
(すまないザミヘルを止められなかった俺の無力を許してくれ…と心のなかで謝っておく)
「お、ぉ、俺の…尻尾が……」
と虚ろな目でボソボソつぶやいているけれどメンタルは大丈夫だろうか・・・
と心配しながら尻尾の元の持ち主を見れば
蠍の尾が無くても変わりなく無表情だし俺に絡みついて遊ぶくらいには元気なようだ。
(ちょ、、せっかく獣人が忘れてくれてるのに触手を服の隙間から忍びこませようとするなッ!!)
かくして俺は温かい上質な生きた毛皮を手に入ったので洞窟で凍えて死ぬ不安は解消され洞窟に捕らわれたもう1人の犠牲者であり話し相手というか仲間が増えたのだった。
(ま、まさか・・・違うよな? 俺が寒いのが嫌だァ――!!とか話し相手が欲しい!ってザミヘルに毎日しつこいほど言ったから―…なんて事、関係あるわけがないよな。)
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