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「化け物、今日も仕事の時間だ」
返事をしなくてもアイツは俺の尻を叩いて刺激すると
慣れた手つきで糸を手繰りよせ糸が切れない絶妙な力加減で糸巻をはじめ糸が切れると値が下がると慎重ではあるものの決まったリズムで止まることなく引きずりだしていく
俺の糸は丈夫で防御力が高い織物や装備品やアイテムができるらしく高値で売買されてるらしい―…あたりまえだが魔物の糸だということは巧妙に隠して売人どもは俺の同族を探して捕まえて稼ぎを増やそうとしてるみたいだ
まぁ、俺のように鈍くさい奴はあまりいないだろう
足が6本の俺と違って8本で動ける同族が捕まるはずもないし
住む場所にこだわりもないから自由気ままに移動して巣をつくり住みつく
俺たちは群れで暮らす習性はない。
情報も少ないのは魔物は駆除対象であり捕まえることはしないからで、ざっくりした情報の中から俺の同族を特定するのも難しいのだろう
俺の欠けた足も冒険者や強い魔物によって奪われたわけだが暮らしていくには問題なかった、逃げ足が遅くなったくらいで―…
あの日、俺が食料捕獲用の糸を見に行くと売人の1人が絡まり
グルグル巻きになった仲間を助けるどころか糸の硬さや丈夫さに目をつけられ
罠にはまって捕まった。
殺されることなく閉じこめられ毎日かかさずコイツに世話をされ糸を巻き取られること約1年間・・・金になるからと魔物の世話までするとは驚きだ。
俺が死ぬと困るからって売人たちは生体調査と体調管理を魔物耐性のあるコイツに押しつけたらしいけど嫌な顔もせず俺の世話をするし自分で狩りをしなくても毎日ご飯が出てくる今の生活は……快適じゃないか!?
それに今まで糸を強引に巻き取られたことなどなかったが
絶妙な糸捌きでスルスルと止まることなく引き出される刺激は
格別であった。
コイツの手が特別なのか比べる相手もいないから分からないが
未知なる刺激は自分では得ることのないもので口を手でふさいだぐらいで耐えられるものでもなく我にもなく前足で抱きついていたのだが
魔物の巨体が前足で抱きつこうと動じることなく糸を巻き続けるって豪胆なのバカなの?
俺はこの刺激を手放してまで逃げる理由をみつけられずにいる
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