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「言い忘れてたこと?」 「はい。それを伝えようと思って今日は来てもらったんです」 「おやおや。これはまさか愛の告白パターンかな?」  にやりと笑いながら茶化すような口調で秋山さんが言うので、僕は思わず苦笑した。 「まあ似たようなものかもしれません」 「え?」  彼女の拍子抜けた声を聞きながら、カフェを一口啜る。カップに半分ほどの水面から湯気は立たなくなっていた。   「大学生の頃から、秋山さんは本当にダメダメな先輩だなと思ってました」 「それ悪口じゃない?」 「大学生の頃から、秋山さんは本当に笑ってるだけで仕事してくれないなと思ってました」 「やっぱり悪口だよね?」 「大学生の頃から、秋山さんは本当に何も考えてない人なんだなとも思ってました」 「待ってこれ何の告白されてんの? 泣きそうなんだけど」 「大学生の頃から、」  僕は足元の紙袋から花束を取り出して掲げる。  根元から先端に向けて、白から薄い赤へのグラデーションを彩る薔薇の花束。その色合いはまるで僕のようだ。  目を丸くして言葉を失う彼女に、僕は両手でゆっくりと心を差し出した。 「秋山さんは本当に素敵な人だと思ってましたよ」  花束が僕の手から彼女の手に移ったことを確認して。  赤色になりきれなかった僕は口を開いた。 「結婚おめでとうございます」
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