静かな夜、そして……

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静かな夜、そして……

 静かな静かな、満月の夜。  月明りに照らされる、ロームルス学園の学生寮。その一室から、賑やかな声が響いていた。 「うむ! 今日の授業は楽しかったのじゃ!!」  狭い室内をはしゃぎ回る、元気いっぱいなウルリカ様。フワフワの寝間着姿は、とても可愛らしい。  同室のシャルロットは、フリフリの豪華な寝間着姿だ。オリヴィアだけは、普段と変わらないメイド服を着ている。 「やはり学校は最高なのじゃ! 学校は大好きなのじゃ!!」 「よかったですね、ウルリカ様。さあ、こちらへ……」  はしゃぎ回るウルリカ様を、オリヴィアは自然な流れでベッドへと誘導する。  そして気づけば、ストンとベッドに収まっているウルリカ様。 「ヴィクトリア先生の授業も、エリザベス先生の授業も、どちらも最高だったのじゃ!」  ベッドに収まったウルリカ様は、楽しそうに昼間の授業を思い出している。  小さな素足を放り出して、パタパタと前後に揺らして、とてもとても可愛らしい。 「どちらも最高……でしたかね?」 「いえ……最高ではなかったと思いますわ……」  危うく学園を破壊しかけた、エリザベスの剣術授業。謎の珍味でいっぱいだった、ヴィクトリア女王の調理実習。  そんな授業を思い出して、オリヴィアとシャルロットはげんなりしてしまう。  微妙な空気の流れる室内。  そんな中、ガチャリと扉が開かれる。 「はふぅ~、いいお湯でした~」  部屋へ入ってきたのは、お風呂あがりのナターシャだ。  頭にタオルを巻いて、ホカホカと湯気を立てている。薄手の動きやすそうな寝間着は、ナターシャにとてもよく似合ってる。 「お待たせしました、次はリヴィの番ですね」 「はい、ではお風呂をいただいてきます」  お風呂道具を抱えて、部屋を出て行こうとするオリヴィア。  扉を閉めようとしたところで、ナターシャから呼び止められる。 「そういえば、リヴィ宛にお手紙が届いていましたよ」 「私宛のお手紙?」 「はい、玄関に届いていました」 「ではお風呂から戻る時に、受けとっておきますね」  そう言うとオリヴィアは、ペコリとお辞儀をして扉を閉める。  静かになった室内に、不意に小さな笑い声が響く。 「ふふっ……」 「あらナターシャ、どうかしたのかしら?」 「実は先程、ウルリカさんの楽しそうな声が、廊下まで聞こえていたもので」 「まあ、それは気をつけなくちゃ……あら?」 「むぅ……むぅ……」  ウルリカ様の方を見ると、ベッドから足を放り出したまま、すやすやと寝息を立てている。いつの間にやら眠ってしまったようだ。 「すっかり寝ちゃってますわね、なんだか子供みたいですわ」 「このままだと風邪をひいてしまいますよ」  シャルロットとナターシャは、ウルリカ様をベッドに寝かせて、やさしくお布団をかけてあげる。 「明かりを薄くしておきましょうか」 「そうですわね……ふあぁ……ワタクシも眠くなってきちゃいましたわ」 「私も……ふあぁ……眠くなってきました。今夜は早めに寝ましょう」 「そうですわね……ふあぁ……」  大きな欠伸をする、シャルロットとナターシャ。しばらくすると、二人もぐっすりと眠りに落ちてしまう。  こうして、静かな夜は更けていくのだった。  …………。  ……。  そして翌朝。  一通の手紙を残して、オリヴィアは姿を消した。
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