オリヴィアのいない朝

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オリヴィアのいない朝

 小鳥のさえずる、透き通った朝。  朝日に照らされる、ロームルス学園の学生寮。その一室から、騒がしい声が響いていた。 「ウルリカ! 起きてウルリカ!」 「うむぅ……なんじゃぁ……まだ眠いのじゃぁ……」  ベッドのうえで丸くなるウルリカ様。お布団にくるまって、可愛らしいイモムシ状態だ。  そんなウルリカ様を、シャルロットは必死にゆすり起こそうとする。 「起きてウルリカ! 一大事ですわよ!」 「うむむぅ……朝ごはんは……マカロンとクッキーにしてほしいのじゃぁ……」 「寝ぼけてないで、起きてくださいですの!」 「そうですよウルリカさん! リヴィがいなくなったんですよ!!」 「むぅ……リヴィがいなく……なんじゃとぉっ!?」  オリヴィアがいなくなったと聞いて、ウルリカ様はビョーンと飛び起きる。  あまりの勢いで、天井に頭をぶつけてしまう始末だ。しかしウルリカ様は、そんなことまったく気にしない。 「どういうことなのじゃ! 妾のリヴィは、どこへ行ったのじゃ!!」 「分かりませんのよ……起きた時には、いなくなってましたの」 「荷物も全部なくなってるんです……どこへ行ったのでしょうか……」 「なぜ……なぜじゃ……。妾のリヴィは、一体どこへ……」  わなわなと体を震わせるウルリカ様。かと思いきや突然、部屋をウロウロと歩き回る。そしてグルグルと首を回す、さらに辺りをキョロキョロ見回す。  ウルリカ様の頭の中は、オリヴィアのことでいっぱいだ。 「えぇいっ、とにかく探すのじゃ! 魔界から妾の配下を全員呼んで、総力戦で探すのじゃ!」  顔をあげたウルリカ様は、かつてない強大な魔力を迸らせる。 「時空間魔法なのじゃ! 魔界の全戦力を人間界に──」 「「待ってぇーっ!!」」  とんでもない魔法を発動しようとするウルリカ様を、慌てて止めるシャルロットとナターシャ。 「待ってウルリカ! ワタクシ達も一緒に探すから、時空間魔法は止めて!!」 「しかし、早くリヴィを見つけねば……心配なのじゃ……寂しいのじゃ……」 「気持ちは分かりますわ、だけどとりあえず落ちついて!」 「まずは冷静になりましょう。そうだっ、なにか手がかりを残してる……かも……」  話の途中でナターシャは、オリヴィアのベッドへと目を向ける。じっとベッドを見つめたまま、小さく声を漏らす。 「あれは……お手紙……?」  ナターシャの声につられて、ベッドの方を見るウルリカ様とシャルロット。よく見るとベッドの隅に、小さな手紙が置かれているのだ。 「お手紙ですわ! きっとオリヴィアからのお手紙ですわよ!」 「なんと書いてあるのじゃ? 読んでみるのじゃ!」 「はいっ!」  手紙を開いたナターシャは、書いてある文字をゆっくりと読みあげる。 「えっと……“結婚します、今までお世話になりました”……」  流れる沈黙。パサリと音を立て、床に落ちる手紙。  そして──。 「「「結婚!?」」」  早朝の学生寮に、三人の叫び声が響くのだった。
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