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その時になってわたしは初めて本物の魔物を目にしました。木々ざわめかせて登場したソイツは空を覆うかのような黒く輝く翼と邪悪にひんまがった鉤爪をもち、鋭い眼光でわたしたちを射抜いていました。
子供一人に修道女一人。とても立ち向かう気にもなれませんでした。逃げよう、逃げようとは思っているのですが、ただの絶望とは少し違ったあきらめのような感情が襲ってきて足を押さえつけてしまったのです。何年も共に過ごしてきたはずの身体がちっともいうことを聞きませんでした。
きっと事情を知らぬ誰かがわたしたちをみたら、なんて滑稽なのだろうと笑い飛ばすほどに間の抜けた顔をしていたのでしょう。
全ての感情が混ざりに混ざってもうどうしたらよいのか二人共わからなくなってしまっていました。
――カミサマどうかわたしたちをお救いください。
混乱した頭のなかでは今まで幾度となく繰り返してきた文言がひたすらぐるぐるとかけめぐっておりました。
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