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わたしもこの修道院で育った身。
わたしが小さいころはやはりこころのどこかにカミサマへの畏れを抱いていて、信仰を否定するようなことがあればバチが当たるのではないかと毎日震えておりました。
時代の変化、と言えるでしょうか。 あの子たちは魔王があたかも真夏の夕暮れに空を覆い尽くす黒雲のように真っ黒に染めてしまった世界しか知らないのです。
カミサマへの信仰心が薄くなることは当然のように思われましたが当時のわたしはまだ若く、正義のこころが内側でゴウゴウと音を立てて燃えておりましたのでそんな子供たちの反応に本気で悩み、院長先生の所に相談に行ったりしたのです。
院長先生にそのことをお話しすると先生は声をあげてお笑いになりました。
ガッカリですガッカリを通り越してゲンメツです。
けれど先生はわたしのゲンメツの気配を敏感に嗅ぎ取られたのか、すぐにわたしの方に向き直って真面目な顔でおっしゃいました。
「そうですね。きっと私たちの生がとても苦しいのも神様がわざとお与えになった試練なのかもしれませんね。 そこに気がつくとはなかなかかしこい子たちではないですか。」
院長先生は生の苦しみを肯定しておられるのでしょう。
ああ、愉快なことを聞かせてもらったわ、なんて言い出しそうな御顔を必死に硬直させて厳しい表情を保とうと苦戦していらっしゃるのがまだ未熟だったわたしですら見て取れました。
「子供たちの中に、自らの生まれを呪うような子はいなかったのでしょう?それならいいじゃありませんか」
そうですね――ここにいるのは皆親を失った子供たちです。
そんな子たちが今、冗談を言い合って笑えていることに比べたらカミサマへの冒涜なんて些細なことに思われました。
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