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Pale white
は、と目を覚ました。ぐるりと周りを見渡した。
ただひたすらの、星空が広がっていた。
いつも通りのその景色に、私はひとつ伸びをして、くぁ、と欠伸をした。
さぁて、今日は何をしようか。
と言っても、何もする事は無いのだけれど。
私の全ては、真っ暗な蒼に浮かんで、この星空を見る事だった。そうして、ただ、その遠くに見える輝きに憧れを抱く事だった。
けれどその日、いつもの様にぼーっとそのきらめきを視界に入れた刹那、初めて私の耳朶を揺らす声がした。
「はじめまして」
低く、緩やかに届いた声。その音は、しっとりとしてまるで、ビロードの様。
「……はじめ、まして?」
恐る恐る返事をしたならば、その艶っぽい声は、くすりと笑って、こう言う。
「恐れないでいい。僕は君から、酷く離れた場所に居るのだから」
「え……どのくらい?」
「君に会うまで100億年かかるくらいかな」
離れているのに、どうして声が届くのかしら。
お道化た様にそう答えてくる声に、そんな事を思いながら、「いつも通り」という言葉から僅かにはみ出した時間が訪れた事に少しだけ心を揺らした。
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