7人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
Darkness
冗談の様に事実を言った僕は、くすりと笑った。
そんな音にかぶせる様に、くぅ、と身体の中心が音を立てた。
お腹がすいて堪らない。満たされることが無い。
この場所に居るのは僕だけだった。たった独りで気が付いた時から、この場所に在った。
ここに居る僕のする事は、ひたすらに近づいてくる全ての食べ物を食べ尽くす事だけだった。
彼女が素敵だと言った、きらびやかに光っているそれらは、僕の近くに来たと思ったら、目に見えない何かに引き裂かれて、そうして、一瞬で僕のお腹に取り込まれていってしまう。
それを伝えたら、彼女はここに来てくれなくなるだろうか。
「そんなのは嫌よ。絶対、そこに行きたいわ」
「だったら、感情を落ち着けて待っている事だね。そうすれば、在る時気が付いたらここに来ているよ」
これは秘密にしておこう。だって僕は、できれば彼女に逢ってみたい。
何をしても満たされない僕の、その瞳に映ったほのかに青白い輝きを宿す彼女。それは酷く小さく見えた。けれど同時に、酷く美しかった。その美しさを近くで見たいと、そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!