7人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「僕の戯言を、きいてくれるかい」
「いいわよ。だって、やる事なんて無いもの」
その言葉に、くすり、と何度目かの笑いが零れた。きっと彼女も、今までの暇つぶしと同じ台詞を言うんだろうな、と何処か諦めの気持ちが在った。
「僕らは、どうしてここに居るのだと思う」
なぞかけの様に発した台詞に、普通は困って、そうして、困惑する音が聞こえるはずだった。けれど、彼女は間髪入れずに飄々と返答を寄越した。
「分からないけれど……貴方にだって、私にだって、何かしらの役目はあるわよ」
予想が外れたことが何処か悔しくて、僕は駄目もとで彼女に言う。
「そうかい、それなら、君が僕に役目をおくれよ」
「そうねぇ、そうしたら、私のお話し相手はどうかしら」
そうすれば、私は焦る事が少しばかりは少なくなるわ、そう言ってえくぼを深める彼女を見て、酷く妙案だと思った。
そんな素敵な役目をくれたのは、今までの中で彼女が初めてだった。小さく頷いて、そうして、彼女から僕は見えないんだった、と思って、またしても、くすり、と笑いが零れた。
最初のコメントを投稿しよう！