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Yellow
「じゃあ、今日から君のお話し相手を務めよう。良くも悪くも、時間はたっぷりあるのだからね」
そう言った見えない彼との不思議な声のやり取りが始まった。
そうして、どのくらいの時が過ぎたのだろう。暇なときに、ねぇ、と呼べば、彼は、何だい、といつでもすぐに返事をくれた。
私の上をほうき星たちが過ぎ去っていった時も、隣にいたはずの靄に包まれていたひとが、白く小さく干からびて、いつの間にやら見えなくなってしまった時も、褐色のひとたちが消えてしまった時も、ただ一言、ねぇ、と呼ぶだけで、彼はすぐに、私の声に反応した。
「ねぇ」
「何だい」
その日も、憧れの星空を見上げる事しかする事が無かった私は、彼を呼んだ。
「ついに、誰も居無くなってしまったわ」
「そうかい、それは、哀しい事だねぇ」
いつも通りのビロードの音が、少しだけ眉を落とした様な響きを宿す。その声だけが、私の聴覚を支配していた。裏を返せばそれは、その音しかこの場所には落ちて来ないという事。
その事実に気が付いた私は、ふと、寂寥感に見舞われた。
何の為に存在しているのだろう、と思った。
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