7人が本棚に入れています
本棚に追加
「正真正銘の、ひとりぼっちよ」
「そうかい」
「……他に言う事は無いの」
「……何を言って欲しいんだい」
その言葉に、ぎゅっと唇を噛んだ。何を言われたって、今の状況が変わる事が無い事くらい、知っていた。その事実が身に沁みて理解できるほどには、私は大人になっていた。
黙り込んだ私に、彼はくすりと笑う。
「何が楽しいのよ」
すこしばかりムッとして、そう言葉を落とせば、彼は言う。
「僕と同じだよ、ペペ。僕も、正真正銘の、ひとりぼっちだ」
「嘘よ、フィーは、そんなにも輝いているじゃないの」
そう言い返せば、小さく無言が落ちて、そうして、またくすりと笑い声が耳朶を揺らす。
「君から見えているきらめきは、僕から離れた場所だよ。そのきらめきの更に奥に居るんだ。丁度君と、線対称だよ」
「……そう、だったの」
勝手に、フィーはきらめきの中に身を置いているのだと思っていた。ネオンサイン輝くきらびやかな空間にいるのだと思っていた。
「でもね、ひとつだけ、こんな場所に居る良い事があるんだ。仕方がないから、ペペにも教えてあげようか」
「何よ、もったいぶらないで」
そう言って急かして見せれば、彼は小さく、周りを見回してごらん、とだけ言った。
言葉通りに見回した。いつもと何ら変わりのない満天の星空が、まるで河の様に遠くに広がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!