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「何が、見える?」
「いつもと同じだわ」
「詳しく言ってごらん」
「……満天の、星屑」
そう答えれば、その低い声が優しく言う。
「僕にも同じように、輝いている星が見えるよ」
「一緒だわ」
「ねぇ、ペペ。もしもきらめきの中に居たら、この美しい星屑を、僕たちは美しいと思えただろうか?」
その言葉に目を見張った。そうしてもう一度、まじまじと、空を見た。
そこには、先ほどとは何ら変わらず、無数の星が浮かんでいた。
けれど、どうだろう。その一粒一粒が、先ほどよりも酷く輝いて見えた。
まるでフィーの言葉は、魔法の様だった。
「……見れなかった、わ」
「そうだね。こんなにも暗くて、蒼いこの世界だから、だからこそ僕たちはこの星屑を見て、一緒に綺麗だねと言い合えるんだ。こんなにも美しいきらめきを、誰かと共有できるというのは、酷く素敵な事じゃないかな?」
そう言って彼は、またごほん、と咳き込む。そうして、それを誤魔化すようにくすりと笑う。
「誰かと、綺麗だね、と言い合うだけで更に美しく思えないかい?」
「……ええ」
フィーのその言葉に、初めてこのど田舎の端っこに生まれて良かったと思った。
他でもない彼と、感情を共有することが出来て初めて、しあわせ、というひらがな4文字が心にじわりと沁みた気がした。この言葉はこういう時に使うんだ、と身をもって知った。
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