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Spem perficio
今日は、しあわせの話をしようと思う。
遥か昔のそのまた昔。
そこには、ただ、無が在った。
見えないの、と誰かが幼い声で問うた。
その声に、そっと首を横に振る。
きっと君たちが、そこにその目を向けたなら、いきなり視力がすぽんと抜け落ちてしまったかのように感じる、虚無が広がっていた。光ですら存在しない、ただひたすらの、無。
けれどそれを上手く伝えるすべを持たない僕は、見える為には、“光”が必要なんだよ、と言った。
けれどそこには、光はおろか、なぁんにも、無かったんだ。
続けてそう言えば、ふぅん、と納得していない声がしぶしぶ相槌を寄越す。
ゆるりとその小さな手を伸ばしてきたので、そのままその温もりをぎゅっと包み込んで、手を繋いだ。
そのあたたかさを己の表面でしっかりと感じながら、くすり、と微笑んだ。
そうして、空を見上げる。満天の星屑が、僕らを見ている。
じゃあ、始めようか。
だって、ほら、星降る夜はこんなにも、長くて、永いのだから――……、
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