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次の瞬間、俺の体に激痛が走る。視界は真っ暗闇。耳には愛美の俺を呼ぶ声。機械音。
「博也!博也!」
愛美の呼ぶ俺の名が懐かしく感じる。俺は愛美の声がする側の指を動かそうとすると激痛が走る。だが声すら出せない。医師の声も耳に届く。看護師に指示を出す声。どんなに懸命に処置をしてくれようと俺が死ぬことは確定している。やることは一つしかない。
俺は激痛に耐えながら指を、手を、腕を動かそうとする。もしかしたら折れているのかも知れないが、気をつかう必要はない。この五分のためだけの感覚ならば、どれほどの無理もきく。
カタンと音が鳴る。
「博也?」
ベッドから俺の腕が落ちる。愛美は俺の名を呼びながら俺の手を握り、その腕をベッドに戻す。
「博也……、頑張って……」
ああ頑張る。ただ愛美の手を握るためだけに頑張る。俺は激痛に耐えながら、ゆっくりと指に力を入れていく。愛美の両手が俺の手を握っている。それに伝える思いは一つ、愛しているということ。
見えない。話せない。だけど伝える。伝わると信じて。
「博也……。博也……」
愛美の俺を呼ぶ声に嗚咽が混じる。俺は俺の頬に温かいものを感じた。自らの涙だと気付いたのは愛美の手が俺の頬にあたったから。
「博也……泣かないで……」
次の瞬間、俺は俺の体を見下ろしていた。
「ご臨終です」
医師のその言葉と共に愛美を俺の体にに抱き付き声をあげて泣いた。
その様子を見守る俺に横にいた天使は笑顔を見せたまま囁いてくる。
「後悔はないかい?」
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