手を握る。

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「ないわけないだろ!死にたくなかったよ!生きたかったよ!愛美を泣かせたくなかったよ!愛美と一緒にいたかったよ!」  天使は何も言わずに俺の言葉を聞く。 「でも、愛美が泣いてくれたよかった……。我慢しなくてよかった。だからいい」  天使は首を傾げて歯を見せて笑ってから俺に手を伸ばす。 「生まれ変わりを信じなよ。いつかまた会えるから」  俺は天使の手を取り、一緒に空へと向かう。空にはやはり憎いくらいの満月が輝いていて、どうしてもこの世に未練を感じる。空に浮かびながら先ほどまでいた病院を見下ろす。 「愛美は幸せになれるかな?」 「さあ?でも、お兄さんはそのために五分を使ったんでしょ?」  俺はそれに答えず微笑む。 「あんたの言う生まれ変わりを信じてみるよ」  この天使は信じてもいい。そう思えたから。幸せに暮らしている未来の愛美を会うために。それも悪くない。そう思う俺の死んだ夜だった。 了
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