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「君の好きにしていいよ」
そう言われても、翔太の身体は硬直したように動かない。ここで本当に手を出すと、もう戻れないような気がしたのだ。どこに戻れなくなるのか、なぜ戻れないのかわかりもしないくせに。
「それとも、ちゃんと言葉にした方がいい? もっと触ってほしいって」
忍は自分で、シャツのボタンに手をかける。そうして見せつけるようにゆっくりとボタンを外していった。そのたびに白い肌が覗いている。そうしてとうとうすべてをはだけさせると、その眩しさに翔太は喉を鳴らした。
「本当に、いいのか?」
「いいよ、きて」
その言葉を合図に、翔太は滑らかな肌を撫でてみる。服を着ていた時には感じなかったが、素肌に触れるとひんやりと冷たかった。肉付きが薄いせいか、すぐ下に骨が当たる。
「お前とは、どんな関係だったんだ?」
「うーん、どんな関係だったんだろうね」
「……」
浅からぬ関係ではないことは、いくら翔太でもわかる。きっと肌を重ねたこともあるのだろう。それも何回も。問題なのは、そんな大事な人を翔太が忘れるわけがないと言うことだ。どこで出会ったのか、何をきっかけに出会ったのか。さっぱり見当もつかない。
「ねぇ、僕は猫じゃないんだよ。いつまで撫でてるの?」
ちょうど腹を撫でていると、忍が抗議の声を上げた。口を尖らせ、翔太の手の甲に爪を立てる。その仕草は猫そのものだったが、今は黙っておいた。そして期待に応えるべく、色素の薄い乳首を抓った。
「んあっ!」
いきなりの刺激に驚いたのか、忍は大きく目を見開いた。それと同じく、唇から甘い悲鳴が漏れる。縋るように掴まれた腕が、頼られているようでなんだか嬉しかった。
「痛かったか?」
「う、ううん」
先ほどまでの軽口はどこへやら。忍は小さく首を振ってみせる。しかしすぐに目を蕩けさせ、もっと、と強請り始めた。
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