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第2笑 アニマル先輩
風信は今、普通棟(1棟)4階一番奥のロシア語教室にいた。
「ああああぁ......なんだろこの状況......」
「はい、ストレートフラッシュ」
ウサギは赤色のハート3、4、5、6、7の5枚のカードを机の上に出した。
「やられた~!! って! ストレートフラッシュじゃないし! なに! なんなのぉ~!! この状況!」
風信は椅子から立ち上がり、ツッコんだ。
「いや、ストレートフラッシュだし」
「たしかにストレートフラッシュだな! いや! そうじゃないんだわ!」
「ていうかお前だれだ?」
「あれ!?!? おれのこと知らなかったオチィィィィ~~!!」
「ふふふ、皆のものよ紹介が遅れたわね。今日からの新入部員よ」
「勝手に部員にするな!」
猫は風信をもう部員として入れた。
「まあまあ、といわけでこの用紙に名前かけ」
「かくかー!」
「なぜだ? 入りたいから階段の下にいたのだろう?」
「それ! めっちゃ誤解! はいりませんよ!」
「はははは! 大丈夫だ、わかっている!」
「なにが?」
「入りたい! という目をしているではないか!」
「そぉうですか???(怒)」
「ていうか、この部活一体なんなんだよ?」
「あれ? あなたチラシ渡したのにみてないの?」
「チラシ? ......あ、あのチラシか......」
風信はカバンからpy部の勧誘チラシを出した。出したのはいいが、パッといれたためくしゃくしゃになって、字が読めないほどに折れていた。
「あ、ぐちゃぐちゃだ......これは読めんな」
「おい! なにしてんねん!」
「え!? 急な大阪弁!?」
急に大阪弁でツッコミをいれたのはカバの着ぐるみのコスチュームを着た女性だった。
「それ! 私が描いたよ!」
「そうなのか? でもまだいっぱいあるならいいじゃん一枚ぐらい」
すると、カバは泣き始める。
「ぐす......ぐ......ぐすぐすぐすん......ふえぇ......」
「カバが泣いてるところ初めてみた......」
「あら! カバちゃん! 大変! 大丈夫?」
猫はカバを心配し頭をナデナデして、慰めようとした。
「カバちゃんって......」
「あああぁ~もうわかった! 悪かったな!」
すると、カバ、猫、ウサギはニヤリとした。
「じゃあ、これで許してあげる......名前書いて......」
カバは泣きながら、用紙を渡した。
「おっ! 許してくれるのか!?」
と、用紙になにも考えずに用紙に笑顔で名前を書いた。
「これで、許してくれるのな! え......これって......」
風信はなにかに気付き、笑顔が消える。
その用紙には「部活動入部届申請書」と太字で堂々と大きく書かれていた。
「キイヤぁぁぁぁぁ!!!!!!」
風信は頭を抱え、猫に引っ掛かれたような声で叫んだ。
「ありがとう......私のために......」
「カバにありがとう! 言われたし! てか入らねえ!!!」
「ぶ~ぶ~! でもだめだよ、もう申請書書いてもらったし......それに......」
カバは携帯の写真を風信に見せる。
「ん?」
そこには、笑顔で申請書を書く風信の写真が撮られていた。
「なんっ! じゃあこれは!? アンビリーバボー!! ああ! くそ!! わかったよ! 入る! 入ればいいんだろ!!! ちくしょぉぉぉ!!!!」
「ふっ......では、ようこそ私たちのPy部へ!」
猫は改めて、部活に引き入れた。
「はあ......もういいよ......そういえば、なにする部活なんだ? ここ」
「そうか......おまえのはしおっしおだもんな」
「おい、猫、ちょっとエロいぞ言いかたが......」
「そうだな? というか、気づかない? Pyって......」
「パラサイト・ヤッホー?」
ウサギが答えた。
「お前が答えるのかよ! ていうか自分の部活だろ!? 自分の部活の名前知らずに入ったのか!? それ間違えだよね!? パラサイトって映画じゃん!! ヤッホーってなんだ!?」
「パラグアイ・ヤッホー?」
今度は、カバが答える。
「それ国だし! 南米の暑い国! またヤッホーって! 好きだな!」
「え? みんな私の作った部活の名前、まさか知らずに......うそ」
猫はカバとウサギの答えにびっくりして落ち込んだ。
「なんて仲間入れたんだよ! 猫!」
「冗談よ」
カバはそれに対して答えた。
「ですよねーー!!」
「ごほん......さっさと正式名称言うわね」
「だったら、早くいってくれ」
「Py部のPyは......」
猫は部活の正式名称を言う際に言葉を貯めた。クイズ番組の答えを言う時みたいに。
「なげぇな! おい! そんなにためなくていいだろ!!」
「PARTYのPyよ!」
「あっそ......」
「え? なに? その反応」
「だって、普通だし、もっと面白い名前なのかと......」
「きにしてることを普通にいうわね......」
「そだな」
「で?」
「で? とは?」
「いや......部活内容は?」
「え? もう経験したじゃない??」
「え? まさか......トランプをする部活とか?」
「呆れたわ......たしかにトランプをやる部活ではあるけど、私たちはもっとスケールがデカイのよ! それはあらゆるゲームをやりつくす部活よ! 例えば! ボードゲーム! トランプ! 世界のゲーム! コンピューターゲーム! スマホゲーム! カードゲーム! あらゆるゲームをして、世界を制する! それが、Py部よ!」
「そうか......」
と、風信はカバンを持ち、帰り始める。
「ちょっと! どこいくの! さっきの説明聴いてたぁ!!」
「わかってるよ、きいたきいた。でもこの後用事があるんだ......帰らせてくれ......」
「なんだ、用事があるのか? じゃあさっさと帰れ」
「あんた何様だ! 入れとか! 帰れとか!」
「あら? いけない? なに言おうが私の勝手でしょ? それに大事な用なんでしょ?」
「はあ? なんで大事な用ってわかるんだよ?」
「それは、言えないわね? 板井風信くん。その代わり明日はちゃんと顔出してよね? 君はもうPy部の人間なのだから」
「わかった......じゃあな」
と、風信はロシア語教室の扉を開けて、帰ろうとした。その瞬間、風信が帰る間際、猫は小声で風信にだけ聴こえるようにニヤリとして、独り言のように話した。
「いきものを大事にね......」
風信はその言葉にびっくりした。
今日初めてあった猫(人)が、自分のあのことを知ってるわけがない。
風信は家につくと、さっそうと部屋のヒヤシンスのお世話を済ませた。
そして、制服のままベッドに転がり、ふて寝した。
その時、風信はあることに気付いた。
「そういえば、あの猫......なんでおれの名前しってんだ? ていうか、おれの趣味まで」
風信はあの猫(人)に疑問が浮かび上がり、考えていた。そしてそのまま、眼を閉じて寝てしまった。
むしろ考えないといけないのは猫だけではない。まだまだわかってないことだらけだ。
明日になったら、いつもと違う派手な1日が始まるのだろう。
ー 2笑 アニマル先輩 ー 続く
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