最終章「私のお隣さん」

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「何それ!」 「例えば漫画借りた時、お礼言うついでにさり気なく頭触る。後はお前のことバカとか何とか言う時肩押すフリして触る。それから果物やらお菓子やら渡す時わざと俺の手に触んなきゃ取れない位置に持つ。で後は…」 「も、もういい!もういいってば!」 滑らかに説明する旭君を必死に止める。 じゃあ何、私が今まで「やった!偶然!ラッキー!」なんて思ってたあれこれは全部、旭君の策略手の平の上だったってこと!? 「むー、悔しい」 「いや悔しくねぇよ。俺必死過ぎてやばいヤツじゃん」 「私もほぼ同じようなことばっかりしてたから全然ヤバくないよ」 拗ねた口調で言う私に、旭君が吹き出した。 「お互いこんな分かりやすくて、俺ら今まで一体何やってたんだろーな」 「アハハ、だね」 近過ぎて見えないこともあるってことなのかな。お互い、お隣さんで幼馴染みっていう関係に縛られ過ぎてたような気がする。 そんなこんなで側から見ればイチャイチャ丸出しの会話をしていると、いつの間にか参拝の順番が回ってきた。 お賽銭を投げ、二礼二拍手。しっかりと両手を合わせて目を瞑り、日頃の感謝を心の中で伝えた。それからまた一礼して、順番交代。 こっそり「これからもずっと旭君の彼女として隣にいられますように」ってお願いもしちゃったことは、誰にも内緒だけど。 「私あの瞬間好きだなぁ。白いので頭ファサファサってしてくれるあの…」 「御幣(ゴヘイ)な」 「旭君よく知ってるね!」 「お前巫女したことあんだろーが」 「小学生の頃だもん、忘れちゃったよ。あの時の旭君、カッコ良かったなぁ。大きな和太鼓叩いてさぁ」 「もーいいから行くぞ」 「わっ」 話の尽きない私に溜息を吐いて、旭君が私の手をギュッと握って勢いよく引いた。 「楽しかったねぇ」 「流石に疲れた」 神社ではおみくじを引いたり屋台を回ったり、太鼓や笛の音色に合わせて獅子舞が舞うのを見たり。 その後は近くのショッピングモールによって軽くお昼ご飯。初売りセールを楽しみにしてたけど、人が物凄くて揉みくちゃになって結局あんまり見れなかった。 「人がいっぱいだったね」 「今日位家に居ろっての」 「旭君、だからそれブーメランだよ」 「うっせ」 「アハハ」  夕方に差し掛かり、旭君の綺麗な横顔に夕日の赤がかかる。 その光景が綺麗で、思わずしばらくの間見惚れてしまった。 「なぁ」 「え、な、何!?」 盗み見してたのがバレちゃったのかと思ったけど、旭君の反応的に違ったらしい。 「最後いっこ行きたいとこあんだけど」 その言葉に、私はコクリと頷いた。
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