第一章「大好きなお隣さん」

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バーベキューも、プールも、花火も、雪遊びも、ただのお昼寝も。 旭君と一緒なら、なんだって楽しかった。 そりゃあ意地悪ばっかりで大っ嫌い!って思ったこともたくさんあるけど。 最後に笑って「ひまりちゃん」って。 そう名前を呼ばれたら、嫌な気持ちなんて何もかも吹っ飛んでいっちゃう。 小さな頃は分からなかったけど、今なら分かる。 この気持ちが、旭君だけに感じるこのドキドキが、大好きって気持ちなんだって。 私大倉ひまりは、石原旭君のことが大好きなのです。 もうすぐ七月、夏服の真っ白なセーラー服を私はとても可愛いと思ってるけど、皆はダサいダサいって溜息を吐いてる。 「ひま、おはよー」 「おはよう、菫ちゃん!」 「おっはよー、ひまり」 「あ、風夏ちゃんおはよう!」 「ひまりー、今日もかーわいいっ」 「きゃー、風夏ちゃん暑いよぉ」 「アハハ」 同じクラスで仲良しの遠藤菫(エンドウスミレ)ちゃんと小浜風夏(コハマフウカ)ちゃん。 菫ちゃんとは中学の時からで、風夏ちゃんとは高校に入ってから知り合った。 菫ちゃんは頼りになるお姉さんタイプ、風夏ちゃんは運動が得意で明るい人気者。二人とも優しくて楽しくて、大好きなお友達です。 「あ、旭…石原君またねっ」 歩いてる途中に二人に会ったから、旭君は私から離れてスタスタと歩いて行ってしまった。慌てて声をかけたけど、反応は何もない。 「今日も仲良く登校?ヒューヒュー」 風夏ちゃんがニヤニヤしながら私を見る。 「ち、違うよ!家が隣だから偶然…っ」 「とか言って本当は…?」 「げ、玄関前でこっそり待ってました。旭君が出てくるまで」 熱くなる顔を隠したくて、俯きながら口にした。 「やーん!ひまりってホント可愛いっ」 「風夏、あんまからかわないの」 「からかってるんじゃないよー、ひまりがあんまり可愛いからさ。あ、声かけない方がよかった?」 「ううんっ、旭君どうせ学校の近くになったら離れてっちゃうから」 「えー、それ酷くない?」 「酷くないよ!旭君は優しいもん」 「私には全然そうは見えないなぁ」 風夏ちゃんは口を尖らせて、私はそれを見て笑った。
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