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ーー放課後、陸上部の風夏ちゃんと帰宅組の菫ちゃんと別れて、私は家庭科室へと向かう。中学の頃から、私は家庭科部所属だ。
お裁縫好きなお母さんの影響もあってか、小さい頃からちまちました作業が好きだった。
キッチリ分量を量ってふわふわのスポンジができた時の達成感も好きだし、ミシンを踏んで頭にイメージしていたものが形になって出来上がったあの瞬間もとても好きだ。
「あ、日誌…」
今日、日直だった私。さっきまで書いていた日誌を、教室の教卓の上に置き忘れたことに気が付いた。部活へ行く途中に職員室に寄って出そうと思ってたのに。
クルッと踵を返した瞬間、ドンッと勢いよく誰かにぶつかった。
「キャッ」
「うわっ」
その拍子に尻餅をついて後ろに倒れた私。痛みに一瞬目を瞑ってすぐに前を見ると、男子が焦ったように私の顔を覗き込んでいた。
「ご、ごめん!大丈夫!?」
「あ、うんっ」
ぶつかった時は気付かなかったけど、同じクラスの一ノ宮君だ。
「俺結構な勢いで走ってたからさ、マジでごめん!ケガとかしてない!?」
一ノ宮君はまだ焦っているらしく、しきりにキョロキョロと私の体を見回している。
「ううん、私こそ急に立ち止まったりしたから。ごめんね?一ノ宮君は大丈夫?」
「俺は全然!はい、立てる?」
スッと差し出された手、一瞬迷ったけど甘えさせてもらうことにして私はその手を掴んだ。
「よっと」
「ありがとう」
強い力で引っ張られて一瞬で立ち上がれたから、流石男の子だなぁと変なところで感心してしまった。
「うわ、大倉さん軽っ!吹っ飛ばすはずだわ」
「い、いやそんなことないよ!」
「マジで大丈夫?足とか痛くない?」
「ホントに平気。気にしないで大丈夫だよ」
「そっか、なら良かった」
ニカッと笑う一ノ宮君は、正に爽やかスポーツ少年って感じだ。確か、サッカー部だったかな?
「じゃ、俺行くわ」
「うん、部活頑張ってね」
「サンキュー」
颯爽と去っていった一ノ宮君の後ろ姿を見送ってから、今度こそ教室に戻ろうと歩き出してすぐにーー
「何やってんの、お前」
旭君が廊下の壁にもたれかかって、しかめっ面でこっちを見ていた。
「わ、旭く…石原君!」
いつからいたんだろう。もしかしてさっきの見られちゃったのかな?だとしたら恥ずかしい。鈍臭いやつって思われちゃう。
…って、今更か。
「石原君、今から帰るの?」
旭君も菫と同じで部活なしの帰宅組だ。
「行くぞ、ほら」
明るい表情を意識しながら話しかけた私をまるっと無視して、旭君は私の手からカバンを奪った。
状況が分からない私はただオロオロするだけ。
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