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あるところに、なおちゃんという小学校1年生の女の子がいました。
なおちゃんは、やさいがきらい、とくに、にんじんが大きらいでした。
どんなに小さく切っても、なおちゃんの大好きなハンバーグにすりおろしてまぜても食べてくれないので、なおちゃんのママは困ってしまいました。
ある日、なおちゃんのママがキッチンに立ってにんじんをれいぞうこから取り出すと、にんじんのなかから、ちいさなかわいらしい女の子があらわれました。
「あなたは、だあれ?」なおちゃんのママがふしぎそうにたずねます。
「わたしは、にんじんのようせいです。なおちゃんがにんじんをたべてくれないのをとてもかなしくおもっています。なおちゃんをよんできてください」
なおちゃんのママがなおちゃんをよんでくると、なおちゃんは、にんじんのようせいを見て、目をかがやかせました。
にんじんのようせいは、なおちゃんにいいます。
「なおちゃん、ホットケーキは好き?」
「大好き!」
「じゃあ、オレンジ色のきれいなホットケーキをつくってあげるね」
「やだ。どうせ、にんじんがはいっているんでしょう?」
「だまされたとおもって、食べてみて。となりで、つくりかたもみていてね。じゃあおかあさん」
ようせいさんは、うたいます。
♪にんじんを1本皮をむいてすりおろして~♪
♪ボウルに入れてそこにたまご2コと牛乳120ミリリットル~♪まぜて~♪
なおちゃんは、きょうみしんしんでみています。
♪そこにホットケーキミックス1ふくろ~♪
♪まぜまぜまぜまぜ、よくまぜて~♪
♪火をつけてフライパンにバターをとかして~♪
♪きじをおたまいっぱいぶん、フライパンにおとして~♪
♪ぷつぷつしてきたら、ひっくりかえして~♪
♪ふたをして、2ふんで、やきあがり~♪
♪シロップをかけて、さいごにまほうの粉をぱらぱらぱら~♪
♪にんじんのようせいとくせい、おいしいにんじんホットケーキのできあがり~♪
♪おさらにのせて、さぁさ、なおちゃん、食べてみて~♪
「・・・いただきます。ぱくっ。・・・おいしいっ!」
「ほんとうに?」なおちゃんのママもびっくり。
「うん。ママも、食べてみて」
「・・・ほんとう。とっても、甘くてやさしい味」
にんじんのようせいさんは、まんぞくそうです。
「なおちゃんに、この、まほうの粉をあげるわ。にんじんがおいしくなる、まほうの粉よ」
「・・・でも、まほうの粉がなくなっちゃったら?」
「そのころには、なおちゃんにもにんじんのおいしさがわかっているかもね」
にんじんのようせいさんはウィンクしました。
その日の夕ごはんはクリームシチューでした。もちろん、にんじんが入っています。
「なおちゃん、まほうの粉があるから、へいき」
ぱくり、ぱくり。なおちゃんは、おいしそうににんじんを食べます。
(よかった。でも、まほうの粉のおかげなのよね)
なおちゃんのママは、ちょっとしんぱいそうです。
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それから、1しゅうかん。ついに、まほうの粉がなくなってしまいました。
その日の夕ごはんは、お魚と肉じゃがでした。
もちろん、肉じゃがには、にんじんがはいっています。
夕ごはんのお皿を見て、なおちゃんが泣きそうになりました。
(まほうの粉、もうない・・・)
肉じゃがのなかのにんじんをはしではさむと、なおちゃんは目をつぶって口に入れました。
「え!おいしい!にんじんって、おいしかったんだ!」
なおちゃんは、おもわず叫びました。
なおちゃんのママもパパもうれしそうです。
そこに、にんじんのようせいがあらわれました。
そして、なおちゃんの耳もとでなにかささやきました。
「えっ、ほんとう?」
「ほんとうよ。みんなにはないしょね」
「ありがとう、ようせいさん。また、会える?」
「わたしたちは、いつも、やさいのそばにいるよ。声をかけてくれたらでてくるわ」
それから、なおちゃんは、にんじんだけでなく、ほかのやさいも好ききらいなく、たべるようになりました。
めでたし、めでたし。
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おまけ。
えっ?ようせいさんは、なおちゃんになんてささやいたかって・・・?
ひみつなんだけど・・・とくべつにあなただけにはおしえるね。
「まほうの粉はね、ただの、かんてんの粉なの。まほうでもなんでもないの。だましてごめんね」
やさいをたべられない子のところに、やさいのようせいさんはあらわれるかもしれないから、ぜったいにひみつにしてね。
おしまい。
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