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ただいまが聞きたくて
遠くに見える飛行機雲に視線を向けていると、彼女は私の服の袖を引き、早く好物のプリンを口に入れてくれとせがんだ。
「あぁ、すまない。あまりにもハッキリと見えたから」
私がそう言って微笑むが、彼女はくすりともせずにプリンだけをジッと見つめている。
封を開け、小さなスプーンで一口サイズにすくうと、初めて彼女は嬉しそうに大きな口を開いた。
「ははは、大丈夫だよ。そんなに大きな口を開けなくても」
笑いながらそう呟き、彼女にプリンを食べさせる。一日の中でも一番穏やかなこの時間が、私は好きだ。
そして、この時間が好きなのにはもう一つ大きな理由がある。プリンを食べてから数分間だけ、京子が私の処へ帰って来るからだーーーー。
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