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ーーーーそして今日も、私は彼女にプリンを食べさせる。黄色く光るプリンが彼女の口に運ばれる度に、彼女の目もキラキラと輝いて来る。
「美味しいか?」
「美味しい。あなた、いつもありがとう。コレはどこのお店のプリン?」
その質問は、彼女が京子に戻った合図だ。
「京子、私が誰だかわかるかい?」
「あなたを忘れるはずないじゃない。結婚して五十年以上経つのよ? それで、何処のプリン?」
「これは駅前のケーキ屋さんのプリンだよ。京子、おかえり」
「ウフフ、何を言ってるのよ。帰ってきたのはあなたでしょう?」
京子はそう言って顔をクシャッとさせて笑った。
「そうか、そうだったな……。帰ってきたのは私だった」
私がそう言って笑い返して再び名前を呼ぶと、既に京子は電池の切れた玩具のように無表情になっていた。
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